外国人の労働者も増え、東京都では住民基本台帳に基づく在留外国人の人口が約72万人(2025年1月現在、東京都公表)にも及びます。内訳は区部約60万人、市部約11万人です。国際結婚も身近なものになりましたが、日本国籍者と外国籍者が国際結婚をすると、外国籍者は配偶者ビザという在留資格の中ではプレミア級のビザを取得できます。
国際結婚をすれば誰でも簡単に貰えると言うわけではありませんし、自動的に貰えるわけではありません。法律で定められている厳しい要件をクリアしなければなりません。その要件を一つ一つクリアする為に、証明をしていく必要があるのです。要件の中での核は、真実の結婚であるかという婚姻の実態になります。
〇婚姻の実態
配偶者ビザの要件の中で最も重要な事は、婚姻の実態があるかどうかです。配偶者ビザなので、当たり前ですね。他の在留資格に比べて偽装しやすかったり、偽装結婚を斡旋するブローカーのおかげで、年々審査が厳しくなってます。かつては長くても3カ月の審査期間だったのが、今では短くて3カ月、長ければ6カ月(2025年3月現在)と思っていた方が良いです。
日本人と入籍しただけで他の在留資格よりも優遇されたり、申請や審査の過程で楽に許可されるという事はありません。本当に結婚しているのか、婚姻生活の実態はあるのか、もっと言えば愛はあるのか、そんな審査がされます。その証明をする為に書類を作成し、裏付ける資料を添付する事になります。愛があるのかどうかは、神のみぞ知ると言う事にはなりますが。
〇離婚歴がある場合は偽装を疑われる
日本人の配偶者に外国人との離婚歴がある場合や、外国人側に日本人との離婚歴がある場合は、偽装を疑われて審査が厳しくなります。おわかりだと思いますが、日本人の配偶者が偽装結婚に手を貸している、外国人がビザ目的で偽装結婚を繰り返している可能性が否定できないからです。弊所でも、このようなケースを扱った事がありますが、明確な証明の為、より詳細な説明や証拠資料を添付する必要があります。
〇年齢(年の差)について
歳の差結婚というのはそんなに珍しく無い時代になりましたが、偽装結婚の疑いをかけられ、審査は厳しくなります。男女どちらが年上年下でも、外国人が相手となるとブローカーを通じた偽装結婚かもしれないと思うのは、過去の審査データに基づいたものと思われます。日本人同士でも財産目当てと思われるような事もあるでしょうが、日本に在留できるプレミアムビザが貰えるならと高額なお金をブローカーに支払い、何の面識も無いのに入籍し、同居もせずに離婚するケースが有るためです。年の差がある場合には、何らかの証明を求められる事も想定すべきで、スムーズな審査の為に予め証明書類を添付する事も必要です。
○出会った経緯について(マッチングアプリや結婚紹介所は審査が慎重)
どこで、誰と、どんなスチュエーションで出会ったのかは、重要なポイントです。例えば友達の紹介なら、どんな友達なのか、初めて会ったのは自宅なのかお店なのか、連絡先の交換はその場なのか、等々、細かく具体的に資料を作ります。お店の店員さんだった相手にに声をかけた、隣のテーブルにいたグループに声をかけた、よくあるナンパみたいな事だった、全て正直に報告します。出会いは満ち溢れていますし、日本人同士だってありえる出会いなので問題ありません。嘘を付くと、逆に突っ込まれて辻褄が合わなくなりアウトとなってしますので、それに比べれば正直に表現しすようにします。むしろ、現実味があり、審査の印象も良いと思います。
逆に、マッチングアプリや結婚紹介所は、例え本当だったとしても偽装の疑いをもたれ、審査が厳しくなります。偽装しやすいからというのもあります。マッチングアプリなら、どんなアプリを利用してどれくらい利用していたのか等、入会記録や支払い記録、マッチング記録で証明する事になります。結婚相談所なら、どこの相談所で入会はいつで、紹介の経緯や出会いの経緯等を証明する必要があります。ケースバイケースですが、その辺の手続きは、ご自身で申請するよりは専門家の行政書士か弁護士さんに相談するのも良いと思います。
○出会ってからの付き合うまでの経緯、付き合ってから結婚までの経緯
出会ってからお付き合いするまでの交流はどうだったのか、どのタイミングで付き合う事になったのか、付き合ってからはどのような交際だったのか、これも細かく日時まで特定して記載していきます。具体的には、いつ告白したのか、デートはどこに行ったのか、お互いの友人との交流はあるのか、人に話すのは気恥ずかしくなるような事を提出しなければなりません。恋話好きなら問題は無いと思いますが、依頼した行政書士さんに知られるのは恥ずかしいと思うかもしれませんね。
入管の審査官には、それを説明する必要があり、審査官は日々、恋愛ストーリーを読んでいる事になります。なので、恋愛話を興味本位で読む事も無く、違和感があるか無いか、偽装ストーリーでは無いのかを目を光らせてチェックする事になります。外国人ブローカーは、日本人の専門家が申請したフォーマットをどこかで入手し使い廻すので、そもそもAIで弾かれたりプロの審査官に突っ込まれる事になります。そういう事からも、最初から本当の話を記載した方が違和感が無く自然なストーリーになります。
弊所にご依頼の場合、私も雑談を通して要件についてのチェックをしているので、興味本位では無く機械的に聞いているだけだと思って結構です。仕事柄、婚姻や離婚の話はたくさん聞きますので、何とも思わないと言うと失礼な言い方になりますが、要件を満たしているかどうか、証明方法はあるのかどうかの視点で伺っております。
また、交際期間はどれくらいか、結婚を決めるまでの期間はどれくらいかの審査もポイントになります。出会って直ぐのスピード婚も有り得ますが、出会ってからの期間が短いと審査は厳しくなります。親や兄弟は知っているのか、なぜ知らないのかと突っ込まれる場合もあります。誰にも知られずに戸籍を売るような偽装結婚もあるので、審査官に疑われるからです。
◎愛はあるのか?出会いは?年齢は?交際期間は?どうやって証明する?
本当に夫婦としての結婚をしたのかを確認する為に、日本人の配偶者は入管の質問書と呼ばれるフォーマットに、プライベートな事を細かく書いて署名する事になります。嘘偽りや偽装とバレると配偶者ビザの許可得るどころか、外国人は犯罪者になり退去強制、協力した日本人も罰せられる事になります。プライべートな事なので知られたくないと思うような事でも、審査では有利に働く事情の場合もあります。むしろ、正直に記載した方が全体の違和感が無くなり整合性がとれて有利にさえなります。正直に書いて申請の専門家にみてもらい、アドバイスや指摘を受けるのも大事だと思います。
【質問書】について
プライバシーに関する事を記載するので、恥ずかしさもあり、どこまで書けば良いのかというご質問を受けますが、全て包み隠さずに記載していきます。嘘をつくと、いつか辻褄が合わなくなり更新の際にバレてしまったり、更新時の書類と整合性が取れずに突っ込まれてしまい、不許可になってしまう可能性もあります。質問書の内容は、出会いから結婚に至るまでの二人のラブストーリーを書く様なイメージです。いつ、どこで、誰と、何のきっかけで出会ったのか、どういう経緯で交際が始まったのか、互いの親族(親・兄弟)は知っているのか、式は挙げたのか、コミュニケーションは取れるのか、婚姻届けの証人は誰がなったのか、等々、たくさん記載する事になっています。プライバシーをさらけ出す事になるので恥ずかしい方もいるでしょう。弊所でも、申請する際の調査の為、面談の中でざっくりと伺います。気恥ずかしそうに、そんな事まで聞くんですか?と質問を受ける事がありますが、そりゃそうですよね。赤の他人にに、いきなり馴れ初めや家族構成、出会いや交際中の成り行き、どこにデートに行ったのかとか、付き合い始めたのはいつで、プロポーズはいつで、等々を聞かれると、気恥ずかしいですよね。しかし、興味本位で聞いているのでは無く、上述したように全て申請に必要な内容です。入管に提出する書類に記載する事項となります。それくらい、プライバシーについて突っ込んで審査されます。
〇証拠としての添付資料について
上述した観点から、写真やメール、lineの履歴は重要な証拠となります。写真は最低5枚、line等の履歴は10~15個くらいです。人によっては、恥ずかしい写真やlineの内容を提出する事になります。そうでなければ、婚姻の実態の証明にならないからです。交際期間が短いほど、審査に使える要所となる写真やlineの証明は難しくなります。
例えば、弊所では最低の写真5枚とするならば、依頼人それぞれの恋愛の過程にもよりますが、出会った日、交際を始めた日、交際中、プロポーズした日、結婚した日のような日を時間軸に沿って基準にします。それぞれの証明になる写真があればベストですが、無い場合は、こんな写真ありますか?と他の写真が使えるかの検討をします。実際はこれだけでは無く、それぞれの友人や家族と旅行に行ったり食事をした際の写真も必要になります。
それぞれの場面についての写真について詳細は避けますが、出会った日で言えば、友人の紹介で会食したのならは、皆で飲んだ際の写真なんかはベストです。出会ったシチュエーションの証明になりますね。
lineは、日付が入ったスクショが日時の証明になります。出会った日にline交換をして帰宅後に「初めてお会いしたのに楽しかったです」のようなやりとりがあれば、写真と合わせて、初めて会った会食で交流が始まった証明になります。どんなlineの内容が欲しいかと言えば、写真と被りますが(写真と会話内容の履歴で日時や経緯の証明になる)、出会った日、交際を始めた日、交際中、プロポーズした日、結婚した日を軸に、デートの場所の打ち合わせや待ち合わせ時の内容、告白した頃の内容、デート楽しかったね的な内容、等々、依頼人に応じた内容の履歴を用意して貰っています。
あるあるですが、用意して頂いた写真が10枚とします。いろんな場所での写真なのでしょうが、後ろの風景が解らず二人の自撮りアップを10枚ご持参頂いても、仲良しである事はアピールできても、いつのどこの何の写真なのかは解りません。部屋の中で服装やメイクを変えて、アップの自撮りしたのと変わりません。記念日にどこどこのお店に行きました、旅行に行きました、実家で家族と初対面しました、そんな証明をする為の写真なので、周りの風景や場所の雰囲気、季節感、友人や家族が移っていなければ、その写真は審査上は写真が無い事と一緒になってしまします。単に提出する事には、全く意味がありません。
婚姻の実態の証明については、深堀していくとキリが無いのでこの辺にします。配偶者ビザの要件の一つを証明するのにも、細かいポイントがたくさんある事がお解り頂ければ幸いです。弊所では、こういった書類集めのアドバイスやコンサルタントを含めた上での申請代行を行っております。書類集めも1カ月くらいかかり、適切なアドバイスをさせて頂いております。国際結婚の配偶者ビザ取得の申請サポーターとして、弊所にご依頼頂ければ幸いです。
行政書士 青木敏孝 拝