相続のリスクから家族を守る、家族への最後の思いやり

あなたの死後にあなたの意思を反映する

 

それが遺言です

 

 遺言は、満15歳になれば自由に残せます(民法961条)。被相続人(亡くなった人)が生前に、自分の財産の処分の仕方や遺言でしか認められない事項等を、意思表示して書面で残しておくものです。一般的には「ゆいごん」と呼ばれてますが、法的には「いごん」と呼ばれます。

 遺言は、死者の意思表示の効力が死亡後に生じる物であるために、法律で遺言として認められる要件が決められています。自分では遺言のつもりでも、法律に従った方式で無ければ遺言としての効力は認められません。逆に言うと、遺言には大きな効力がある為、遺産は基本的に遺言書通りに分ける事になります。その為、相続人同士での争いが起こりにくくなります。

 

 遺言書は、自分の意思を確実に未来に伝えるための重要な手段です。元気なうちに遺言書を作成することで、家族や大切な人々への思いやりを形にし、未来の安心を確保することができます。

 

遺言の役割

 

家族への思いやり、財産の円滑な承継、法的トラブルの回避

 

1.家族への思いやり最後の愛のメッセージ、未来への贈り物)

①家族の混乱を避ける

 遺言が無い場合、遺産分割の方法について意見が分かれ、争いになる事が少なくありません。遺言を残すことで、個人の意思を明確に伝え、家族が混乱や争いを避ける手助けになります。

 

②公平な遺産分割

遺言を通じて、家族それぞれの状況やニーズに応じた公平な遺産分配を実現する事ができます。例えば、特定の家族に特別な配慮が必要な場合、その意向を遺言に明記する事で、家族全員が納得できる分配が可能になります。

 

③家族の安心感

 遺言を残すことで、個人の意思が尊重されるという安心感を家族に与える事ができます。これにより、遺産相続に関する心配事を減らし、家族が心穏やかに過ごせるようになります。

 

④特定の意志の実現

 特定の家族に対する感謝の気持ちや、特定の財産を特定の人に渡したいと言う意思を遺言に残す事で、故人の思いやりを具体的な形にする事ができます。

 

2⃣ 財産の円滑な承継円満な財産分配、争いを避ける智慧)

①明確な指示の提供

 遺言書によって、財産の分配方法や各相続人への具体的な割り当てが明示されます。これにより、相続人間での誤解や争いを防ぎます。

 

②法的な効力

 遺言書は法的に有効な文書であり、故人の意思を確実に実現するための強力な手段です。公正証書などは特に法的効力が強く、相続手続きがスムーズに進む助けとなります。

 

③税務対策

 遺言書を通じて適切な財産分配を行う事で、相続税の負担を軽減する事ができます。事前に税理士や法律専門家と相談する事で、最適な相続プランを立てることが可能です。

 

④特定の意思の尊重

 遺言によって、特定の財産を特定の人や団体に譲渡する意思を明確にする事ができます。これにより、故人の希望が尊重されます。

 

⑤手続きの簡略化

 遺言書が有る事で、遺産分割協議などの手続きを簡略化し、相続手続き全体が迅速に進むことが期待できます。

 

3⃣ 法的トラブルの回避(法的安心、平穏な未来のために)

①明確な遺産分配の指示

 遺言書によって、故人の意志が明確に示されるため、相続人間での争いや誤解を防ぐことができます。誰に何がどのように分配されるかが明確であることで、争いの元を断ちます。

 

②相続手続きの円滑化

 遺言書が有る事で、相続手続きがスムーズに進行しやすくなります。特に公正証書遺言などは法的効力が高いため、手続きが迅速に進む助けとなります。

 

③法律的な問題の予防

 遺言書が適切に作成されていることで、相続に関する法律的な問題や不備を予防することができます。これにより、後々の法的な争いやトラブルを未然に防ぐことができます。

 

④相続税対策

 遺言書を通じて、相続税の負担を軽減するための対策を講じることができます。適切な財産分配や税務対策を行うことで、相続税に関するトラブルを避けることができます。

 

⑤特定の希望や意思の実現

 遺言によって、特定の人や団体に財産を譲渡する意思を明確にすることができます。これにより、故人の意志が確実に尊重され、法的トラブルを回避することができます。

 

 

 

 

 

遺言の種類

 

 遺言の種類は、民法で定められています。大きく分けて普通方式特別方式があります。普通方式は、一般に遺言としてイメージされているような遺言です。特別方式は、隔離病棟にいる方や船の上で急に遺言をする必要があるような場合の、緊急の場合の特別な方式です。

 ここでは、一般的に作成する一般方式についてお話を致します。一般方式には、自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言の3種類があります。一般的に利用されているのは自筆証書遺言と公正証書遺言で、秘密証書遺言は実務上は利用されていません。

 

 〇自筆証書遺言 心の声を紙に綴る、手書きのメッセージ)

  遺言者が自ら自書(自分で書く)する方式です。世の中のイメージする遺言で、大半がこの形とも言えます。自書なので、パソコンで書いてプリントアウトは遺言として認められません。日付、氏名も自書し、押印します。押印は実印では無く、認印や指印でも構いません。いつでも書ける 費用がほとんどかからない事がメリットですが、大きなデメリットもあります。公正証書遺言と異なり、第三者によるチェックが予定されてないからです。認知症などで遺言能力が認められないままに作成された場合には、遺言の有効性を巡って相続人間で争いになる事があります。

 

 メリット 

  • 簡便性: 手軽に作成できる。いつでも書ける。
  • 費用: 公正証書遺言より費用がかからない。

 デメリット 

 

  • 法的リスク: 書き方に不備があると無効になる可能性がある。法定の形式不備で無効になりやすい。
  • 保管リスク: 紛失や改ざんのリスクがある。偽造・変造のおそれがある。

 ・発見されにくい  ・争いの種になりやすい  ・検認が必要

 

 本当に無くなった人が書いた遺言なのか? 他の相続人が偽造したのでは? 先に発見した相続人が書き換えたのでは?遺産分割手続きが終わった後に遺言書が発見され、もめてやり直し。そんな事が現実にあります。また、家庭裁判所で、検認という手続きも必要で、裁判所で開封する前に勝手に開封してはいけません。開封してしまうと、亡くなった人が書いたものなのか判断がつかなくなってしまうからです。検認を受けて、自筆証書遺言の方式に沿って残された物だと確認してもらって、初めて遺言書として認められます。法務局に本人が預けておく保管制度を利用すれば検認手続きは不要ですが、通知制度がありますが保管されているのか相続人は知り得ませんし、自筆証書遺言の方式にあっているかどうかや遺言については法務局は相談にはのってくれません。また、A4サイズで余白は5㎜以上などの保管してくれる様式も、民法での自筆証書遺言の方式に加えて、別途決められています。

 

 

 〇公正証書遺言 公証人が保証する、確かな安心)

 公証役場の公証人が関与して作成する方式です。公証役場の関与があるので、遺言としての確実性が高いとも言えます。

 

 メリット

 

  • 信頼性: 公証人が関与するため、内容が確実に法律に適合している。遺言が無効になりにくい。
  • 安全性: 公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がない。
  • 証拠力: 法的トラブルが発生しにくく、裁判で有力な証拠となる。

  ・遺言の確実性から争いの種になりにくい  ・検認が不要  ・発見されやすい(問合せサービスの利用)

  ・文字が書けなくても作成できる  ・公証人が自宅や病院に出向いてくれる(日当は別途必要)

 

 デメリット 

 ・費用がかかる(相続財産の評価額によって公証役場に払う費用が違ってきます)

 ・手間がかかる(遺言の内容を自分で考え、公証役場の煩雑な手続きをする必要があります

 ・証人2人が必要(遺言者本人と、その遺言は確かにその人の意思だと認めて署名する証人が必要)

 

 公正証書遺言は、現在の我が国の遺言制度の中では、最も確実で信頼できる遺言と言えます。自筆証書遺言のように、方式も知らずに素人が思い付きで書いてしまい、遺言としての効力は無かったというおそれが少ないです。また、役所がお墨付きを与えてくれるので、役所との煩雑な手続きが必要です。手数料も払いますが、遺産の内容によって決まるので一般的には高額ではありません。遺言書の内容は自分で考えなければならないので、法律を知らなければ内容もきちんと作れません。

 公証役場の手続きや遺言書の内容の叩き台を作成してくれる専門家に依頼すると、公正証書遺言の作成過程はスムーズになります。行政書士は遺産分割協議書作成、相続人確定の戸籍等収集の相続人調査、金融機関での相続手続き等のサポートも行えるので、遺言を実現する際の遺言執行にも役に立ちます。

 

 参考 公証役場での手数料は相続財産の価格によって変わります。高額資産家でない限り、10万円はかかりません。

 

目的の価額 手数料
100万円以下 5000円
100万円を超え200万円以下 7000円
200万円を超え500万円以下 11000円
500万円を超え1000万円以下 17000円
1000万円を超え3000万円以下 23000円
3000万円を超え5000万円以下 29000円
5000万円を超え1億円以下 43000円
1億円を超え3億円以下 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
3億円を超え10億円以下 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
10億円を超える場合 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額

 

 

 〇秘密証書遺言 (秘めた想いを、封じたままで)

 内容を秘密にしたまま遺言の存在だけを公証役場で認証してもらえる遺言書です。遺言の内容は公開せず、遺言書があるという事実だけを確実にする目的です。実務上はほとんど利用されてません。

 

 メリット

 ・誰にも知られない  ・署名と押印だけで文字は書かなくてもパソコン書きのプリントアウトでもOK

  デメリット

 ・法定の形式不備で無効になりやすい  ・紛失、隠匿のおそれがある ・発見されにくい  

 ・手間暇がかかる  ・検認が必要  ・証人2人が必要

 

 おすすめの遺言書は公正証書遺言

 

 おすすめの遺言方式は、個々の状況やニーズによって異なりますが、一般的には「公正証書遺言」が最も信頼性が高く、法的トラブルを回避するために最適とされています。

 費用はかかるものの、無効になりにくく、検認が不要、トラブルになりにくいなどのメリットは、最も遺言の目的に合っています。せっかく遺言書を作成するのであれば、多少の費用はかかっても、トラブルを防止するために、自分の意思を確実に実現できる遺言書の作成を考えた方が無難です。

 ただし、公正証書遺言も万全ではありません。遺言能力があるうちに作成しなければ無効となります。また、確実に遺言内容を実現するには、士業などの相続手続きの専門家に遺言執行者になって貰うことも有効です。

 

 公正証書遺言は、信頼性、安全性、法的効力の観点から最もおすすめです。特に、以下のような場合には公正証書遺言が適しています。

 ・財産が多く、複雑な分配が必要な場合 

 ・家族間のトラブルを避けたい場合 

 ・遺言書の内容が確実に守られることを望む場合

 

     弊所では、公正証書作成サポートとして文案作成や公証役場手続きの代行を承っております

 

日本橋行政書士あおき法務事務所  03-3270-5688

 

あなたの遺言を実現する遺言執行者

 

 遺言の内容を実現する事を、遺言の執行といいます。基本的には相続人が遺言を執行します。遺言でも、長男を遺言執行者に指定したりもします。ただ、相続人が多いと全員の協力での手続きが法定されていたり、専門家で無い人が執行をするのは大変で負担が大きい事もあります。そのような時は、信頼できる人に遺言の執行を任せるよう遺言で指定しておけます。遺言を執行する人を、遺言執行者と呼びます。遺言者が自分の意思で遺言執行者の指定しておきたい場合は、遺言で指定しておかなければなりません。

 相続人が少人数で争いが予想されない場合などは、遺言執行者を遺言で指定する必要がない場合もあります。しかし、相続人や受遺者が多人数の場合や遺産に預金等の金融資産が有る場合には、遺言執行者がいなければ相続人全員の同意がなければ預金等の払い戻しはできず、遺言の執行が相当の時間がかかる事になります。

 遺言書を作成する場合には、スムーズな遺言執行が行われるよう遺言執行者を指定する事をお勧め致します。弊所では、遺言者様のご要望により、遺言執行者としての職務をお引き受けしております。

 

 

遺言執行者については、ここをクリック

 

遺言書は、元気なうちに作成しておきましょう

 

 有効で確実な遺言書を作成しようと思ったら、遺言書の種類選びはもちろん、どのような内容でどのように記載するかも重要です。遺言書作成や相続関連の専門業者がたくさんいますが、書類作成のプロであり、リーズナブルで身近な街の法律家の行政書士はお勧めです。遺言書作成業務や公正証書作成業務を専門にしている行政書士が近くにいるなら、相談をしてみるといろんな事が解ってくるはずです。場合によっては、遺言執行者に就任してもらうことも可能だと思います。弊所は、公正証書遺言はもちろん、離婚や権利義務文書の公正証書を専門に扱っておりますので、お気軽にご相談下さい。